やりがいを「生み出す」習慣が身についている人は自分らしく働ける

23歳の頃。わたしは1度目の結婚で別居から調停へと人生のどん底真っ只中で、できるだけ人とコミュニケーションを取りたくなかった。実家にすごすごと戻ってきたものの、働かないで父のお世話になるのは病んでいていてもさすがに居心地が悪く、なんとか重い腰を上げ携帯電話の部品製造ラインで派遣社員として雇ってもらった。

仕事は液晶画面のバックライトを反射させる部品を組み立てる手作業。目だけを出した状態の薄いブルーのクリーンスーツに身を包み、職場に入る前にはエアーシャワー、指には手袋とゴムの指サックといった完全武装。作業中はほぼ私語なし。コミュ障だった当時のわたしには安心安全の環境だった。

作業は全て手作業。ピンセットを使い、プラスチックの反射板に何枚もの透明なシールを枠にピッタリ合わせて貼るというもので、言ってしまえば同じ作業を一日中続ける単調なもの。仕事を始めて1,2ヶ月もすれば慣れてきてしまい、単調な作業が退屈に感じた。

フリーターではあったが高校を卒業してから5年接客販売業でお客様と関わる仕事をしてきた。メンタル不調を抱え、人と関わる機会の少ない安心安全な仕事と思い自分で選んだけれど、接客と比べると正直言ってつまらない。何かないかな…と探すようになった。つまらない仕事が面白くなるような、何か。

ライン作業に『自分との勝負』をもちかけた

1日の作業の終わりには一人一人が必ずその日の成果を報告することになっていた。何個生産したかを記録しておき毎日報告する。その記録は作業員全員分の生産数が書けるようになっていて、よく見ると全く同じ作業をしているにもかかわらず報告数にはバラツキがあった。わたしはここに着目して、その日に一番数多く生産できるようになりたいとふと思った。

だからひそかに一人で、誰にも言わずに、勝手に勝負を挑んだのだ。

どうすれば早くシールを貼れるのか、作業しながら試行錯誤。机の上に部品をどう配置すれば一番効率がいいのかとか、一発で貼る位置を決めるにはどこに基準をおけばいいのか、どうすれば不良を出さずにきれいに仕上げられるのか…毎日そんなことばかり頭の中で考えながら単調な作業を進めていった。

「今日は何千個作れた。明日はもうちょっとこうすればもっと数が増えるかも」
自分との戦いを繰り広げ数週間が経つ頃には毎日一番多く作ることができていた。作業終わりに記入する生産数の報告を楽しみに。完全に自己満足の世界だったけど、おかげで単調な作業も少しだけ楽しくこなせるようになって。

で、少し驚いたのは、報告数を見ていたのがわたしだけじゃなかったという事実。
わたしの報告数が上がるのを見て、同僚が意欲を燃やすようになった。
どうして早くできるの?どうして仕上がりがきれいなの?お昼の休憩時にはそんな会話も増えてきて、同僚とコミュニケーションをとるのもなんだか少し楽しくなった。

何社かの派遣会社が同じ企業に共同してスタッフを派遣していたが、わたしが所属していた派遣会社のスタッフは平均的に生産数が上がり。そのうちもっと技術が必要な新しい仕事を任せてもらえたり、できる人には残業を与えてもらえたり…といったうれしい結果につながった。

「つまらない」はチャンスのサイン

慣れや飽きのサイン「最近つまんない」が出てきたらチャンスだと思えばいい。
最初からそう感じていたわけではないのだから、サインが出たらその時が次のステージへステップアップするタイミングということなのだ。

ここで新たな何かを探し求めてもいいけれど、その前に「つまんない」を「楽しい」に変えるための工夫を考えることもできる。自分の目の前に「ああしてみよう・こうしてみよう」を置けると、不平不満でさえやりがいの発見につながることだってある。

そうやって自分から行動していると、チャンスは向こうからやってくることも。
わたしの場合この派遣会社から転職することになったのは、その仕事ぶりや職場環境を聞いた知人が「この仕事のほうがもっと能力を使えるんじゃない?」と仕事を紹介してくれたおかげだった。

それがわたしを完全にうつから立ち直らせてくれた建設会社の営業事務だった。

転職後数年で先の製造会社はなくなってしまったけれど、この職場ではいろんなことを学んだ。仕事のやりがいは自分で作るもの、降ってくるわけでも元から存在するわけでもないという大切な学び。

どんなことでもちょっとした変化が、毎日を楽しいものに変える。

 

ABOUTこの記事をかいた人

キャリアカウンセラー 大野乃梨子

通称はイトウ(旧姓)/ノリさん。ほんとうの自分を知ること、人間関係や仕事の問題解決に向けた考え方、キャリアビジョンの描き方、ビジョンに向けた課題の取り組み方などに特化した記事を書いています。わたし自身もメンタル不調を患って以来20年、自分と向き合うことや人との関わりを長年考え続け、学び続けている最中です。自分をちゃんと理解し、それをわかってもらう喜びが人を動かす。それが「自分らしく生きる」ことだと思っています。